


一般的にアイアンセットをつくる場合は、まず3番だけをつくり、次に4番、5番とまとめてつくったものをセットとして組み合わせていきます。しかし当社では、最初に部品の重さをひとつひとつ量り、セットにしてから組み立てています。部品は規格で発注しても、どうしても寸法・重量にばらつきが出ます。ですから、最初にきちんと部品を計測して、セットで管理して組み立てることで、品質の高い製品に仕上げることができるのです。さらに、各工程でも確認作業を行ない、1本1本のクラブに製造年月日を記しています。これを見れば、いつ誰がつくったかを追えるようになっています。
「う〜ん。そこまでやるか!」と唸りたくなる程の品質へのこだわり。それでいて目を疑いたくなる程の、業界の常識を覆す価格設定。こうしたビジネスを支えているのは、今や死語となりつつある「良心」にほかならないでしょう。会長の胸にあるのは、「本当によいものだけをつくり、多くの人にゴルフを楽しんでもらいたい」という一途な思いだけなのです。そしてこの思いは、多くの人の心をとらえ、結果となって表れています。2001年、小山にオープンした1号店は、かなりの盛況を博しました。さらに、東京八重洲への進出、そして現在では全国に直営店45店、400コースでショップを展開しており、2年後には500コースでの出店を目指しています。まさに止まらない勢いのトキタ・ac。
会長が抱く、今後のビジョンとは ・・・。

これまでゴルフは、特別な人たちだけのものといったイメージがありました。そしてクラブは、高価なものの方がよいといった考えが主流でした。でも実際には違います。トキタ・acの本質は、ここにあります。高いお金を払わなくても、使いやすくてスコアが縮む高品質なクラブを手に入れて、みなさんに気軽にゴルフを楽しんでもらいたい。結果として、底辺が拡大し、ゴルフ人口は増えるでしょう。本当は、トキタ・acのような会社がもう何社かあればよいと思っているんですよ。コンビニ業界だって、1社だけならあんなに成長しませんでした。何社か出てきた中で、当社が一番になれればいいんです(笑)。今や、団塊の世代が高齢化を迎えています。年金でクラブが買えて、健康のために夫婦でゴルフを楽しめる、そんな姿が理想ですね。いずれは、安い費用で回れる、アメリカンスタイルのゴルフコースもつくってみたいと思っているんですよ。

“ゴルフカジュアル化宣言”を熱く語る社長の目は、少年のように生き生きと輝いていました。お話を伺ううちに、筆者の胸にゴルフの楽しさが蘇ってきて、「もう一度ゴルフがしてみたい」と思いました。バブル期に購入した重いクラブをアメリカン倶楽部に買替えて、コースに出るのもよいかもしれません。さわやかな気持で本社を後にした取材スタッフは、アメリカン倶楽部の心臓部、自社工場へと向かいました。